AppleScriptObjC(Cocoa Scripting)の実行環境は大きく分けて3つあります。
1つ目は、Script EditorもしくはScript Debugger上で動かすもの、あるいはアプレットの書き出しを行なったもの。実行環境IDを取得すると、AppletとDropletは別のIDが返ってきますが、だいたい同じものです。
2つ目は、Xcode上で作成するCocoaアプリケーションです。AppleScriptでアプリを作成して、Mac App Store上で販売することもできます。かなり多くのCocoaの機能を利用できます。
3つ目が、これら2つの中間的な機能を持つCocoa AppleScript Appletです。Script Editorのファイル>テンプレートから新規作成>Cocoa-AppleScript Applet.appを実行すると編集可能になります。
Cocoa-AppleScript Appletは、Script Editor上のCocoa Scriptと同様の機能が使える上に、アプリケーション由来のイベント(起動中であるとか、起動終了したとか)を利用できます。
Cocoa-AppleScript Appletが登場したOS X 10.7時代、Xcode上のようにInterface Builderで手軽にGUIが作成できるわけでもなく、Script Editor上で普通に動かすScriptのようにログを表示してデバッグができるわけでもなく、何か明確な用例が存在するわけでもないため「これでどないせーっちゅーんじゃ?」と、とても手を出せないものと感じました。自分はこれを明確な「失敗作」として評価していました。この環境を嬉々として使っている人物といえば、edama2氏ぐらいのものです。
その後、macOS 10.10以降で通常のScript Editor上で動かすAppleScriptでもCocoaの機能が利用できるようになったため、Cocoa Scriptingのノウハウが蓄積され、「より高機能なCocoa Scripting環境」としてCocoa-AppleScript Appletが再評価されるようになりました。
Script Editor上で記述するCocoa Scriptで機能的に不十分だと感じるようになる場面で、Xcodeを使ってフル機能のアプリケーションを作るほどでもない、という状況において、Cocoa-AppleScript Appletという第3の選択肢が存在していることの意義はあったのです(使っているユーザーがめちゃくちゃ少ないとは思いますが)。
そして、ごくたまに様子を見るぐらいだったCocoa-AppleScript Applet環境ですが、最近(macOS 13.x上で)動かないという声が寄せられるようになりました。自分も動かないことを確認しています。テンプレートから1行も追加していない状態でも動かないので、これは明らかにApple側のミスでしょう。
バグレポートすれば直してもらえるのかもしれませんが、こうした情報が共有されるとか、Appleがドキュメントを出すようにしないと、いつも不手際をこっそり誤魔化すだけで「給料をもらって毎日バグを作るAppleエンジニア」「Appleのエンジニアは製品を作らない。バグを作る」といった批判をかわせない状態になることでしょう。
これは、年表を頻繁に作る立場の人間からいえば、Mac OS X 10.3で「is in」演算子が動作しなかったのと同じぐらいの大規模なバグに見えます。
本件、macOS 14RC上でも同様に発生しています。おおかた、「証明書の期限が切れている」といったたぐいのトラブルだと思っています。