現時点におけるNewtonへの評価は、「旧世紀の遺物」、「何が好きであんな重いPDAを」などという陰口でしょうか?
それはおそらく正しくありません。
一般的には、「なにそれ? どこで売ってるの?」というものになるはず。よほどのマニアでないかぎり、それがかつてアップルから発売されていたPDAであることなど、知るよしもないでしょう。時の流れに埋もれ、風化しつつある現実がそこに横たわっているのみです。
しかし、Newtonに流れている設計思想はほんの4年や5年で風化するものではなく、むしろまだあまたのメジャーなOSが追いついていない先進的なものととらえるべきもの。
不幸なことに、NewtonのOSはNewton Message Padおよび学校教育用のeMateでしか稼働しませんでした。もしこれがMacintosh上で動いていたらと思うと不憫でなりません。そのインテリジェントな処理への指向は、今日においても高く評価されるべきものだからです。
ゆえに、再度問いたいのです。「Macitosh上でそのような環境は作れないのだろうか?」と。
……どうやら、その可能性が意外なところから見えてきたような雰囲気です。
office v.X見参!
最近、ようやくメインマシンでMacOS Xを使うようになりました。Classic上のアプリケーションが予想外に快適に動作したり、いままででは考えられなかったような並列処理ができるようになったのが、そのきっかけ。
バックグラウンドでQuickTime PlayerによりSorensonでビデオ圧縮しながら、フォアグラウンドで各種アプリケーションをAppleScriptから操作しても問題なく動く! これほど重い処理と並行して(AppleScriptのような)システム的に優先度の高い処理をこなせることに驚きました。
そして、超メジャーなアプリケーションである「office」のMacOS X版がついに登場。その評価を行ってみる機会に恵まれました。もちろん、真っ先にやったのはexcelで表を作ることでも、wordで文章を作るでもなく、Script EditorでこれらのアプリケーションのAppleScript用語辞書の内容を確認すること。

Wordの用語辞書を見てみましょう。どのアプリケーションでも受け付ける「quit」や「print」などの基礎的な命令群から構成される「Core Suites」。アプリケーション本体の主要な命令を含む「Miscellaneous Standards」。テキスト関連の命令を含む「Text Suites」、そして表作成に関する「Table Suites」から構成されています。
Excelでもだいたい構成は同じです。 グラフ関連の「Charting Suites」(薄い水色の部分)の存在が独特でしょうか。

Entourageは、一般的なメール送受信関連命令群である「Entourage Mail and News Suites」の充実が伺えます。また、グラフの黄色い部分にあたる「Entourage Contact Suites」が特徴的。Contact Suitesは、Entourageのコンタクトリストにアクセスする命令群……のはずですが、思い切り変わり種の命令が入っています。「lookup jpostalcode」というのがそれで、

たった3行で(書き方を変えれば1行で)7桁の郵便番号から都道府県名と市区町村名をリスト形式で得ることができます。実際にデモを行ったら、マイクロソフトの製品担当が驚いていたぐらいですから(^^; ……よほど「隠し命令」的なフィーチャーなんでしょう。好きですね、こういうMacintoshらしい隠しフィーチャー。
officeの最強アプリケーション、それは……
office v.Xの各アプリケーションについて、自分ではざっくりと、

のように評価していました。レコーダブルであり、操作した手順をすべて記録できるExcelの対応度が抜きんでています。Wordに対する評価は、それほど高くない……むしろ「実際に使い物になる命令はさほどない」というのが自分の認識でした。
しかし……後になって、それがとんでもない誤りであったことに気づくことになります。
Wordこそが、この「えせNewtonプロジェクト」における超重要なアプリケーションだったのです。

なにげにこんな(↑)文章を打ち込んで、この文章における単語をリストで取り出そうとコーディング。記述したリストはたったの5行だけ(↓)。

信じられない結果が返ってきました。
「こ、これは理想的なパーシング……」
ちなみに、MacOS Xで普通にテキストに対してこのような処理を行うと、

と、こんな感じになります。これでは使いものになりませんが、wordでパースしたものは、そのままでコマンド識別用に使えそうな雰囲気です。
おそるべし……日本語のパーサーとして使えるWord。
おそるべし……マイクロソフト。こんなに有用性の高い処理ルーチンを、たかがワープロに投入しているなんて(当たり前といえば当たり前なのかもしれません)。
しかし、これで「えせNewton」実現のための重要なピースが決まりました。
日本語解析=word 
履歴処理、各種情報検索処理=FileMaker Pro
そして、
郵便番号検索=Entourage(^-^;

とりあえず、あとはカレンダーがらみの処理だけなんとかすれば、プロジェクトはかなり前進しそうです。