iWeek Special 2002の「バカムービー研究会」ブースに異質な展示。無造作に貼られたNewt Onのチラシをめざとく見つけては、チラシを求めてくださった方が多数おられました。
100枚用意したチラシも、2日目の午前中には完全に消え、来場者の方々からさまざまな反応が得られました。
こうしたイベント会場でのフィードバックは、今後のNewt Onの開発に大きな弾みをつけてくれるものでしょう。
Newt Onコマンドインタプリタの進化
Newt Onはつねに進化し、オリジナル開発者の自分のコードだけでなく、途中から参加してくださっている有志のコードも統合されてきています。
その成果として最大級のものが、Newt Onコマンドインタプリタの進化でしょう。
これまでは、
東京都の河原さんを検索。
といった形式のコマンドしか理解しなかったものが、
東京都の河原さんの電話番号を検索。
と、より複雑な要素が入ってきても対処できるようになりました。また、目的語などについては、各コマンド処理ルーチンで共有できるような形でデータピックアップされるようになってきました。
ここまで来ると、コマンドインタプリタから呼び出される各種コマンドの仕様を外部公開し、外部コマンドの充実という方向にパワーを割ける感じでしょうか。
実際には、その一歩手前ぐらいだとは思うのですが(コンソールへの結果表示などをまだ集約していないので)、予想より遙かに速いスピードで成長しています。
ここで、メーリングリスト上の議論をふまえ、Newt Onがどういった方向を目指すべきか、将来的にどのようなものが必要かといった話をまとめておきましょう。
Newt On~真夜中は別の顔
Newt Onは主にユーザーからのリクエストによって各種コマンドを実行する、割と寡黙な存在ですが……
毎週金曜日に河原さんに連絡。
のような繰り返し処理をスケジューリングして、指定時刻になるとNewt Onがバッチ動作するような仕様も検討しています。この種類の仕事で最も一般的なのは、Webの更新チェックなどでしょう。
内部的にジョブスケジューラーを持つか、それともEntourageなどの外部アプリケーションを利用するかについては、まだ検討中ですが……バックグラウンドで勝手に仕事をすすめてくれると非常に助かります。
データのバックアップなど、いちいち指示しなくても勝手にやっておいてほしい仕事などは、こうしたジョブスケジューリングの機能でサポートしたいところ。
バックグラウンド動作による文章作成支援
フロントエンドで文章を作っている途中で、ふと調べものをしたくなるときが多々あります。このような場合に、Newt Onに対して調べものをしておいてくれるように依頼できると、より仕事の効率が上がることでしょう。
仕事中、調べものに気をとられて、あちこちのサイトをふらふらと徘徊してしまうのは私だけではないはず。調べものだけを勝手に行ってくれると、すごくありがたく感じることでしょう。
ワークグループの統括~Newt Onサーバー
個人が管理する各種情報を効率的に管理・運用する、「個人用秘書」というのがNewt Onの位置づけ。もし、仕事場でそれぞれNewt Onをバラバラに使っていたら……AさんのNewt Onに入っている情報が、BさんのNewt Onには入っていないという状況が発生することでしょう。
住所録やスケジュールなどはお互いに参照できた方が便利なので(もちろん、個人的な事柄にはマスクできるようにして)ワークグループのメンバー間で情報を共有できる「Newt Onサーバー」とでも呼ぶべきものの必要性を感じています。
それが、一括管理するようなタイプなのか、ネットワーク上に自動的にNewt Onを検出してPeer To Peerで通信を行うようなものになるのか……次期Mac OS Xの機能を見ていると、Rendezvous(ランデブー)の存在が気になります。この機能はきっとAppleScriptからも利用できる筈なので(と、期待したい^-^;)、Peer To Peerで自動的にネットワーク内部のNewt Onを検出できると便利ですね。
職場のみならず、喫茶店などのホットスポットでAirMac経由でネットワークにつないでいる時に、ネットワーク内にNewt Onの端末があったら知らせてみたりすると、やや面白いかもしれません。
ネットワーク機能については、技術面から見た可能性や危険性などを議論し、「なるべく能動的にネットワークに働きかけるのはやめよう」といったところで方針が落ち着いています(メールによる住所録の自動データ収集機能なども検討したものの、ネットから閉め出されかねないのでボツ)。他のユーザーに迷惑をかけそうな機能は実装しないという方針です。
Jaguarで気になる機能たち
Rendezvousの話が出たついでに、次期Mac OS X・コードネーム「Jaguar」について、Newt Onと密接に関わってくる部分をクローズアップしてみましょう。
筆頭は、標準搭載の住所録データベース「Address Book」。どの程度フィールドを拡張できるのか、そもそも住所録以外にも汎用的に使えるのか、とか……Newt Onにとってはたいへん気になる存在です。
Entourageとの相互データシンクロの機構を用意するか、それともEntourageが自前でそのような機能を搭載してくるか、先の話になるので、読み切れないところ……実際にモノが出てきてから検討すべき事項かもしれませんが、楽しみな存在です。
次は、iChat。メッセージング・アプリケーションですが、Rendezvousとの組み合わせにより、通信可能範囲内にいるMac OS Xクライアントを自動認識する機能が実装されている可能性もあり、そのような場合、前述のPeer To Peer通信のきっかけをこのアプリケーションに任せることもできるわけです(検出したら、自動で名刺交換を促すとか)。
トリは、手書き文字認識の「InkWell」。Newt Onと組み合わせると、まんまNewton環境に化けてしまいそうな感じですが、残念ながら英語のみのサポートの様子。
ただ、こうしたNewtonの遺産をMac OS Xに搭載してくることは十分に予想されてきたこと。あまりにも素直にNewtonの機能を載せてきたことは、「ほかにもまだあるのではないか?」と想像をふくらませるのに十分な出来事です。
さらに、アシストの機能までアップルがOSに載せてきたら……?
Newt Onとしてはアップル純正の機能とバッティングする可能性もあるところですが……もし、アップル内で開発をすすめていたとしても、日本語に特化した形での実装は行っていないことが予想されます。
入り口であるInkWellの日本語化が行われていないことからも、それが伺い知れます。
ただし、USのAppleScript製品担当のSal Soghoianに対し、「(Newtonのアシスト機能を実現するような)研究はしていないのか?」と尋ねたところ、「コメントできない」という返事しかもらっていません。
意味的には、「やっているけど、詳細は明かせない」とも取れるわけですが……実際のところ、ほかのプロジェクトで彼のチームはてんてこまいの様子なので、そこまでの余力はないものと分析しています。
そうはいっても、Newt Onがアップル社内の仮想的な競合プロジェクトに負けないものに育つ必要性は感じます。そして、その鍵は「いかに多くのサードパーティ製ソフトウェアと連繋できるか」という1点にかかっているように思います。
Now, “Newt On” is beyond the Newton.
プロジェクト開始当初、Newtonはよき手本であり目標でした。
しかし……Newtonが敷いてくれていたレールは、超えてしまったようにも思えます。すでに、Newtonが実現していたアシスト機能は、そのほとんどについて実現の見通しが立ってしまったからです。
もし、Newtonがその後も順調に成長を遂げていたら、インターネットや現在のさまざまな製品と組み合わせて、どのような世界を実現していただろうか……そんな想像をめぐらしています。
Newt Onの初期ユーザーは、おそらく初心者ユーザーではなく、経験豊富なパワーユーザーの一部ということになるでしょう。情報の有効活用は、住所録などの情報を蓄積しているユーザーにこそ真に必要とされているものだからです。
Newtonを愛してやまないユーザーの方々に、ぜひNewt Onについての要望を寄せていただきたいと思っています。