AppleScriptの環境を構成する大きな要素部品である「PFiddlesoft UI Browser」が、開発者のBill Cheesemanのリタイアに伴い、製品終了になることが2022/4/17に表明されました。
GUI Scriptingの登場と同時に、この技術を完全にカバーし、生産性を格段に向上させるツールとしてUI Browserが登場しました。これを持っているかどうかでGUI ScriptingによるScript記述は天と地ほども差が出ます。
AppleScriptを書くのであれば、まず必携といっても過言ではないというツールであったわけです。
Script DebuggerとUI Browserを柱として、AppleScript系の開発環境が構築されてきたわけで、たいへんに重要なパーツであったことは誰にも否定できないことでしょう。
Bill Cheesemanの動向は定期的にウォッチしていたのですが、「引退した法律家からプログラマに転身」「いいかげん、けっこう高齢」といった認識は持っていたものの、「PreFab Software」から改名した「PFiddlesoft」というユニット名を使っていたあたりで「誰かに引き継ぎを考えているんだろう」と(勝手に)思っていました。
ただ、C++でゴリゴリにmacOSの深いところを叩きまくるようなアクセシビリティ系のプログラムを組むことはストレスが大きかったことでしょう。Cocoaの上からAppleScriptでOSのサービスを叩いていても「またバグが」「勝手な仕様変更が」などと苛立たしいことこの上ないわけで、もっと深い部分で叩いていたら、よりストレスは大きなものとなっていたことでしょう。
正直、このあたりの技術について同等の理解と技術力を有している人間といわれると、世界でも6人ぐらいしかいないことでしょう。Shane、Mark、Sal、Has、あとはAppleの現役エンジニア(世間せまっ!)。
その割にユーザーサポートの負担なども重圧となっていたことでしょうし、Billが続けられないという英断をしたことについては尊重すべきだと考えます。
とはいえ、その大きすぎる「穴」をどうやって埋めていくかというテーマを抱えてしまっているわけです。LateNight Softwareが継承する、とかいった話は(技術的な)可能性としてありそうではあるものの、(マーケティング的かつ費用的な意味では)ちょっとわかりません。
UI Browserの代替技術、代替製品という意味では「Piyomaru Dynamic Menu Clicker」があります。メニューについていえば、「このアプリケーションのこのメニューのこの項目」と指定すると、それを強制的にクリックするような仕組みをすでに作れています。
ただ、Webブラウザ上のコンテンツをGUI Scriptingを用いて操作するような用途では、ちょっと代替手段を持っていません。
UI Browserの基礎的な部品を各種Frameworkとして提供しているものの、ちょっとAppleScriptから気軽に叩いて機能を呼び出すというのは難しそうだと思われました。
UI Browser自体、販売終了するということなので、必要な人はすぐに購入すべきでしょう。そして、Webサイトも閉じる予定とのことなので、必要な資料などをPFiddlesoftのWebサイトからダウンロードしてバックアップしておくべきでしょう。