20周年だそうで。自分がQ&A系SNS「Quora」に投稿した内容を一部書き換えて掲載してみます。自分で書いたものなので、とくに問題はないでしょう。
「Windowsの各バージョンを家に例えると……という話があるが、Mac OS Xではどうか?」 という質問に答えたものです。
Public Beta モデルハウス、ガラスの家
新宿・髙島屋で販売されたので「髙島屋記念」品と呼ばれる。Unicode対応で「髙島屋」という文字を入力・表示できるようになった。ヒラギノフォントの美しさに住人が魅了された。ただし、電源コンセント(Appleロゴマーク)が部屋(画面上部)中央にある。実用性を拒否したオールガラス製のモデルハウス。「住めない家」「いつかは新築を」と眺める程度の完成度。DOSを思わせるメンテ用の工具(Terminal.app)が標準装備されてショックを受ける住人多数。
Mac OS X v10.0 土台だけ
土台と柱しかない。かろうじて美しいガラス窓がついているが、雨風をしのげない。ただし、土台だけは地下3階分あってやたらと豪華。太陽の光を必要としない地下住民(Unix民)にはウケた。
Mac OS X v10.1 きれいな窓がついた土台、しかし家とはいえない
むぎわらの屋根がついた。でも、ドアがついていない。生活に必要なものがそろっていないので、食事したり寝るのに前のあばら屋に帰る必要があった。
Mac OS X v10.2 完成目前の残念な家
はじめて、普通に生活できるようにひととおりの装備が加わった。ただし、家具が入らなかったり居心地が悪かったりしたが、外見はやたらと豪華になった。
Mac OS X v10.3 はじめて住めるようになった家
はじめて、引越し前のあばら屋(Classic Mac OS)に帰る必要を感じなくなった。ただし、ドアの建てつけが悪かったり、うまく動かない家電製品が散見された。
Mac OS X v10.4 住んでいる横で工事をやっている工事中の家
かなりよくなった。しかし、土台部分で以前からあった不具合がそのままだったので、過渡期感がすごかった。ガス(PowerPC)からオール電化(Intel)に切り替えたので、不具合がありつつも快適さが当社比2.5倍という謎仕様。工具(Xcode)の整備がすすみ、快適さをアップさせるためにはメーカー謹製のオール家電専用工具を使うことが必須となった。
Mac OS X v10.5 はじめて満足感が得られた家
土台の修正が行われた。細かい不具合はあったが、とても快適になった。その一方で、無理のしすぎで、家を建てるのに参加していた棟梁(アビー・テバニアン)が辞めてしまった。また、昔のあばら家から持ってきた家具をそのまま使うことができなくなった。引越し前のあばら家は解約された。
Mac OS X v10.6 完成レベルに達した家
家の完成度が増して、人によっては「過去最高」の完成度。ここから先に進むことを拒む住人が散見された。自動販売機が家の中に設置された最初のバージョン。前バージョンの不具合点の修正に全力で取り組むというCEOの公開土下座が評価された。
OS X v10.7 なぜかデザイナーズマンションに改築された家
電源規格が100Vから200Vに変更され、家具の買い替えが必要になったりした。無料配布されはじめ、土地があれば無料で家を建ててくれるようになった。趣味で仕事をしていた変態CEOが健康問題で一線を退き、その後の内紛が感じられる出来。
OS X v10.8 どこが変わったか不明な家
微細な変更なので、変更されたことに住人は気づかなかった。部屋の名前や家具の名前が、犬小屋に合わせて変更された。
OS X v10.9 時計が壊れて正しい時間がわからない家
巨大化した犬小屋に母屋の仕様が変更されはじめた。ただし、時計が狂うというバカみたいな問題点があり、修正できないことに住人が呆れはじめた。
OS X v10.10 愛着がうすれつつある家
野心的な装備が多数備わった、意欲的な改修である一方、あらたな機能不全も出てきた。
OS X v10.11 不具合修正の家
10.10の不具合点の修正を全力で行なった。
macOS v10.12 安定しつつもセキュリティ偏重で機能不全が出始めた家
セキュリティの強化が行われはじめた。機能が充実した名バージョン。しかし、セキュリティを実現するために階段が使えないなど、実用上問題のある機能がぼちぼち見られはじめた。
macOS v10.13 絶望の廃墟、毒の沼
完成直前までは高い評価を得ていたが、引き渡し時に廃墟になっていた事故物件。毒の霧が吹き出していて中に住めない家。macOS史上最悪にして最低。なぜこれで眉毛担当者の首が飛ばなかったのかが理解できない。住民からの嫌われようからmacOS「Vista」と呼ばれた。また、家中にひび割れがあり、眉毛出てこいと激怒するもの多数。この毒の沼をパスする住人多数。これをリリースした眉毛担当者とCEOへのヘイトが高まった。
macOS v10.14 最後の良心?
昔ながらの100V電源で動く家電を次のバージョンから家の中に置いておけなくなった。100Vの家電を動かすと警告を受けるようになった。初期はこまごまとした(無視できないレベルの)問題があったが、バージョン末期にはなんとかまとめられた。「偶数バージョンしかインストールしてはいけない。奇数バージョンは廃墟」との見方が強まった。
macOS v10.15 建築中に崩落した家
建築中に廃墟であることがわかった家。200V電源専用になったので、使えない家電は捨てるほかなかった。10.13で住人も慣れたもので「この家には住めない」ことが夏ごろにはわかっていた。使い勝手に目をつぶってセキュリティのために新聞受けをセメントで埋める(PDFViewのリンクに何かを埋め込まれた場合に備えて機能を大幅に制限した)など、やり方が乱暴(説明が一切ない)。リリース前からmacOS「Vista2」「毒の沼2号」と呼ばれていた。翌年にARM移行+11.0構想が発表されなかったら、かなりの住人がメーカーに直接文句を怒鳴り込んでいたことだろう。
macOS v11.0 犬小屋と一体化した家 模様替えが中心
このところ強化され続けた犬小屋と一体化されることが発表され、犬用のミニチュア家具が置けるようになるらしい家。犬でも使えるように犬用の取っ手や犬用のドアが新設されている。問題視されるような破滅的な機能が少ない一方で、見た目が犬用なのか人間用なのかはっきりしない。ただし、熱により不毛の荒野となりつつあった土地(Intel)から犬用の涼しい土地(Apple Silicon)に移し替えられることになった。でも油断はできない。最近は引き渡し時に事故を起こすパターンが増えているので、どんな事故が起こるかわからない。
とりあえず、v11.0は「偶数バージョン」(16.0)なので毒の沼になる可能性は低そうだが、v12.0(10.17)が毒の沼化しないことを祈る。
macOS 11.0の評価がとても難しい気がします。AppleScript系については、あまり問題が出ていない雰囲気なんですが、もっと下のレイヤー(ハードウェアに近いレイヤーとか)でいろいろ問題が散見されているので、v11.x台はお試し版みたいなものなんでしょう。
見た目もこなれていなくて、使い勝手が軽視されている印象があります。初期のβはデザイン面での出来がひどくて「見た目で使いたくなくなる初めてのmacOS」だと感じました。リリース版は幾分マシになりましたが、デザイン変更を強引に行いすぎて使い勝手を損ねています。ダイアログとウィンドウの区別がつきにくく、ツールバーアイコンの視認性が低い(iWork Apps)とかいう「これでどーしたいの?」という出来。ユーザーが文句を言いまくって12.0ではもう少しマイルドな仕上がりになってほしいところです。
自分自身はmacOS 10.14.6をメイン環境に据えつつ、10.15.7と11.3betaを並べて使っています。10.14.6もベストというわけではなく、Appleの度重なる改悪によってWebViewの動作がおかしくなっているし(バグレポートしても直せないし直らない)、メモリ管理は10.14.x台はわりとひどくて、アプリケーションで使用済みのメモリが解放されないなど、Kamenokoのアプリケーション開発時にmacOS 10.14特有の問題に悩まされました。