ここ最近のmacOSのβ版の出来・不出来
macOS 12 beta 7が出てきました。macOSのリリースはiOS/iPadOSの後にリリースされるのが通例(というか、技術的にそうしないと無理)で、β番号から見て割とβ版の末期にあるものと推測されます。
例年だと、8月の終わりのmacOSの出来でRelease時の品質が推し図れています(農作物みたいだ)。
macOS 10.13:Beta中はとても好感触 → Release版で大事故(前代未聞の大惨事。macOS Vistaと呼ばれる) macOS 10.14:Beta中、バグが多くて使う気になれず → 最終版(macOS 10.14.6)まで様子見 macOS 10.15:Beta中、8月末に大事故。開発者がそろって「こいつは新たなmacOS 10.13だ」として見放す。8月中にmacOS Vista 2のあだ名が確定 macOS 11:Beta中の印象は好感触(Intel Mac)。だが、Release後にM1 Macハードウェアがらみの未知の問題点が多数報告される
というのが、ここ最近のmacOSのリリースの流れです。
macOS 10.13、10.15と「奇数番号は地雷」という状態で、この命名法則でいえば「10.17」にあたるmacOS 12は、不吉な予感を抱かせるものでした。
Cocoa ScriptingなどAppleScript系の処理速度の回復と向上
自分はmacOS 10.15を全力で見送り、macOS 10.14.6をメイン環境にすえました。通例、新たなmacOSがリリースされるとScript環境まわりの評価記事を書きますが、10.15ははじめて評価記事をボイコットしたほどひどいものでした。
「10.15がひどい」という中には、「①本当にバグや不具合のもの」「②勝手に仕様変更して周知しなかったもの」「③OS全体のセキュリティ強化にともない、結果として機能不全になったもの」など多々あります。
その後、M1 Mac mini導入にともないmacOS 11に環境を移しました。M1 Mac mini+macOS 11は、世間の評判もよく、安住の地となるはずでした。
ところが! M1 Mac miniを開封して1時間もたたずに血の気がひきます。Cocoa Scriptingを多用している現代のAppleScriptを走らせると、2012年のMacBook Pro Retina 2012よりも10倍ぐらい遅かったからです。
調べてみると、macOS 10.15の時代からCocoa呼び出しで大幅なスピード低下が発生しており、その延長線にあるmacOS 11も同様の現象が発生。
さらに、M1に搭載されたCPUコアのうち、高性能コアではなく省エネコア(Ice Storm)を使用してAppleScriptが実行されているようで、2011年のMacBook Airよりも数倍M1 Mac miniが遅い処理が出てくる状況でした。
そこで、Shane Stanleyと相談してAppleに詳細なレポートを提出し、「おまえんとこの最新鋭機種は10年前のへっぽこマシンよりはるかに遅いぞ、どうしてくれる?」という報告をしたわけです。もちろん、M1 Mac mini購入後のアンケートでは「10年前のIntel Macの10倍も遅い。不満」と答えています。
運よく、レポートが功を奏してM1がらみの速度低下問題はmacOS 12beta 5で解決。同時にmacOS 10.15から発生していたCocoa呼び出しの速度低下問題も解決(たぶん)。このことで、Intel Macでも、速度低下発生前のmacOS 10.14より高速な処理が行えるようになったほどでした(もちろん、macOS 10.15や11よりも高速です)。
この問題の検証のため、手元のアップデート可能なMacは2台ともmacOS 12に上げてしまい、先日リリースされたmacOS 11.6においてパフォーマンス低下問題がフィードバックされたのかどうかは検証できません。
高速だが小バグが直っていないmacOS 12beta7
さて、macOS 12beta7ですが、ベンチマークを実施したところBeta 5、6と同様にCocoa Scriptingの速度は維持されています。Beta5よりも速くなった処理がある一方で、若干速度低下した項目も見られますが、誤差の範囲内でしょう。
▲同一ハードウェアでOSのアップデートにともない、速度低下が解消され、高速化
▲約700箇所の位置情報と8,000箇所の駅の位置情報との間での最短距離計算。macOS 11+M1 Macでは1時間かかって気を失いかけたが、いまではiMac Proより2.5倍高速の異次元の速さを実現。これなら、ScripterにもApple Silicon Macをおすすめできます
一方で、日本語環境でのみ発生しているNSStringからのData Detectorによる電話番号ピックアップができないバグは直っていません。GUI部品のお守りよりもデータ処理を行うことが多いAppleScript界隈としては「無視できない問題」です。
Release版では直ってほしいですよね>誰となく
また、macOS 11で確認された特定ハードウェア(Mac Pro 2019)で関数計算を間違えるバグについては、当該機種を所有していないため、自分には追跡調査は行えていません。